打鍵感は、正直に言うと、私には合いませんでした。
それなのに、手放していません。売ってもいないし、押し入れで眠らせてもいない。今もデスクの上にいて、気分次第で普通に手が伸びる日がある。
HHKB Studio(雪)と私は、そういう妙な付き合いを続けています。
打鍵感が合わなかったのに、なぜ手元に残っているのか。使い込んでみたら、Studioには打鍵感とは別の土俵の持ち味があったからです。
ちなみにうちに来た経緯は、Type-Sのレビューに書いたとおり。HYBRID Type-Sを買ったわずか4日後に、勢いで買い足した2台目——それがこのStudioでした。約44,000円の勢いです。
そんな2台目を使い込んだうえでの、忖度なしのレビューです。
先に結論
- 打鍵感は正直に言うと、私には硬めだった。Studioのおかげで「自分は静電容量無接点派だ」とはっきり分かった
- それでもお蔵入りにはなっていない。同時押しショートカットをワンキー化できるキーマップが便利で、いまも気分で使い分けている
- 看板のポインティングスティックは、正直まだ慣れていない。ただ中央ボタンと組み合わせたスクロールは便利で常用中
- キースイッチまで替えられる、いじりがいの塊みたいな一台
44,000円かけて分かったのは、「自分は静電容量派」だということ
StudioはHHKB初のメカニカル方式です。
Type-Sの静電容量無接点とは、押した瞬間の感触が構造から違う。とはいえ届くまでは、「打ち比べたところで、違いなんて分からないだろう」と思っていました。私はキーボードに詳しい人間ではないし、プロみたいに指の感覚が鍛えられているわけでもないので。
分かるんですね、これが。
2台を並べて行き来していると、素人の指でもはっきり分かる。
あ、自分が気持ちいいのは静電容量の方だ、と。Studioの打鍵は私には硬めで、「ソリッドな感覚」がある打ち味でした。深い・浅いという単純な話ではなくて、押した瞬間の感触の質そのものが違うんです。
念のため書いておくと、これは「Studioが劣る」という話ではありません。完全に好みの問題です。
ただ、その好みが自分はどっちなのか——それは両方を持ってないと分からないことでした。Studioは44,000円かけて、私に自分の指の好みを教えてくれた。授業料としては高い。でも、無駄ではなかったと思っています。
それなのに、お蔵入りしていない
打鍵感が合わなかったなら、もう使っていないんでしょう?
と思われそうですが、違うんです。
Studioは完全にお蔵入りじゃなくて、気分で使い分けてます。理由は大きく二つ。
同時押しショートカットを、1つのキーに割り当てられる
Studio専用のキーマップ変更ツールでは、複数キーの同時押しショートカットを1つのキーに割り当てることができます。
毎日何度も指をねじって押している、あの組み合わせがワンキーで済む。
地味に聞こえるかもしれませんが、これが実際かなり重宝しています。
打鍵感ではType-Sに軍配を上げた私でも、ここだけはStudioの独壇場だと言い切れます。
ちなみに、この同時押し機能がType-Sにも来た件と、WinとMac両OSのキーマップ設定については別記事にまとめました。
硬めの打鍵には、「今日はこっちの気分」がある
静電容量のしっとりに対して、Studioは骨のある打ち味。
メインの座はType-Sに譲りましたが、「今日はこっちだな」という日が確かにあるんです。
味の違うキーボードが2台あると、その日の気分で選べる。
完全に結果論ですけど、これはこれで結構面白いんですよね。
ポインティングスティック、使ってます。が、慣れていません
Studioといえば、キーボードの真ん中に鎮座するポインティングスティック。
ホームポジションから手を離さずにカーソルを動かせる、この機種の看板機能です。ここのレビューを待っている方も多いと思うので、例によって正直に書きます。
使っています。が、慣れていない、というのが本当のところです。
スティックといえばThinkPadに熱狂的な信者がいますよね。ああいう方々を見るたびに、「使えるようになったらとんでもないんだろうなあ、いいなあ…」と、指をくわえて眺めています。
そんな未熟者の私でも、「これは便利」と言い切れる使い方がひとつあります。
中央のマウスボタンと組み合わせたスクロール操作。ボタンを押しながらスティックを倒すとスクロールになるやつで、これは普段から普通に使っています。手をホームポジションに置いたままページを送れるのは、確かにこの機構ならではです。
じゃあカーソル操作はぜんぶスティックで完結しているかというと、していません。私は普段、StudioをMacBook Proにつないで使っていて、さすがにマウスは使わないんですが——トラックパッドは結構使っちゃうんですね。
手が伸びるのは、まさに細かくカーソルを合わせるとき。
それから、二本指スクロールや四本指の操作みたいな、macOSのジェスチャーを使うとき。
キーマップのカスタマイズで複数指の操作を再現できないかと試したりもしたんですが、これは定着しませんでした。
使いにくい、というより私がまだ追いついていない。慣れたらとんでもないんだろうなあ、という予感だけはあるのに、現実の私はスティックとトラックパッドの二刀流のまま。
なので今のところの結論はこうです。結局自分の指が最高のデバイスですね。ジョブズも言ってましたし。
ジェスチャーパッドは、ごめんなさい。速攻やめました
Studioにはもうひとつ、本体の手前と左右のフチ(側面)を指でなぞってスクロールなどを操作するジェスチャーパッドという看板機能があります。
スティックには「いいなあ…」と未練たらたらの私が、こちらはどうだったか。
使いましたが、速攻やめました。
あれ、本当に使いにくいんですよ。何がだめって、反応が悪くて、反応したら過敏に反応して…ありゃだめです。動いてほしいときは動かず、動いたら動いたで行きすぎる。鈍いのと過敏なの、一番ストレスのたまる組み合わせです。スティックには練習中の身で偉そうなことは言えませんが、こちらは練習する気力すら湧きませんでした。
もちろんこれも私の指の感想で、使いこなしている方もいるんだと思います(公式には感度調整や、機能ごと無効にする設定も用意されています)。
ただ、私の本音はこの一言に尽きます。
あれいらないので安くしてほしいですね。
44,000円という値段の中に、自分が速攻で使わなくなった機能の分が入っていると思うと、正直ちょっと複雑です。
マウスボタンの「軸」を替えに、秋葉原まで行った話
Studioはキースイッチを自分で交換できるホットスワップ仕様です(キーボード部分は通常プロファイルのMX系スイッチに対応)。そして面白いことに、ポインティングスティックとセットで使うマウスボタンの部分には、キーボード部分とは別の、ロープロファイル系のスイッチが入っています。同じ一台の中で、カチカチする部品が違うんですね。これは触ってみるまで知りませんでした。
私はこのマウスボタンのクリック感を変えたくなりまして、スイッチを買いに秋葉原の遊舎工房(最寄りは銀座線・末広町駅)へ行きました。
自作キーボードの聖地です。
ここに行けばキーボード関係は何でも揃う、と信じて疑っていませんでした。
ところが店員さんに聞いてみると、返ってきた答えは「うちには取り扱いがない」。
遊舎工房に取り扱いないものがあるのか、キーボードにおいて——と内心驚きながら、手ぶらで店を出ました。
結局Amazonで見つけて購入(たしか茶軸系のロープロスイッチです)。
交換したのはマウスボタンの部分だけですが、クリックが気持ちよくなって、地味に満足度の高いカスタムでした。劇的かと言われれば「マウスの方が気持ちいいかな」くらいの変化です。
それでも、こういう「自分で手を入れられる余地」が公式に用意されているのが、Studioの楽しさだと思います。
キーの方にもOリングを入れて、打鍵感の調整を試しました。浅くなりすぎたり、「そんな変わんねえな」と思ったり。その試行錯誤の全記録は別記事にまとめる予定です。
正直な不満
- 打鍵感は好みが分かれる。静電容量のスコスコを想像して買うと、私のように「硬い……」となる可能性があります。
- 高い。44,000円。HHKBの中でも最上位クラスの価格で、好みに合うか分からないものに出す金額としては、正直こわい。
- 多機能ゆえに、使いこなすまで時間がかかる。キーマップやジェスチャーは、自分なりの作り込みと試行錯誤が前提です。
- ジェスチャーパッドの反応。鈍いのに、反応すると過敏。私は速攻で使うのをやめました。
どんな人に向いているか
- マウスへの持ち替えを減らしたい人(ポインティングスティック+マウスボタン)
- キーマップを作り込みたい人(同時押しショートカットのワンキー化は本当に便利)
- スイッチ交換などのカスタムを公式に楽しみたい人(Type-Sの分解と違い、こちらは公認の遊び)
- メカニカルのしっかりした打鍵が好きな人
逆に「とにかく打鍵の気持ちよさ」を最優先するなら、私はType-Sを推します。両方買った身としての詳しい比較はこちら。

おわりに
打鍵感は合わなかった。それでも手放していないし、嫌いにもなれない。
買った瞬間の「これだ!」は、正直ありませんでした。
むしろ「自分は静電容量の方が好きだ」という答え合わせから始まった付き合いです。
それでも使ううちにStudioにしかない持ち味が分かってきて、いまは気分で手が伸びる日がある。
道具との関係って、案外そうやって後から育つものなのかもしれません。
自分の指の好みを知らないまま選ぶと、私のように4日で2台買うことになります。みなさんはどうか、どっちを買うべきかの比較記事を読んでからにしてください(笑)




コメント