みなさん、自分のキーボード、育ててますか。
私は育てています。
というか、育てざるを得なくなりました。
HHKB HYBRID Type-Sを買って、純正のまま使って、深さに苦しんで、ラバードームを個人輸入して交換して、キーが効かなくなって「やっちまったな」となって、もう一回開けて直して
——気づいたら総額約2万円と送料2回分を注ぎ込んでいました。
先に結論
- ラバードーム交換とOリングで、HHKBの打鍵感は自分の手で変えられる。これは本当だった
- ただし正直に言うと、最終構成にたどり着いた瞬間も「これだ!」はなかった。使い続けて手が馴染む——そういう落ち着き方だった
- そして今、満足しているかと聞かれると……そうじゃないかもしれない。次に試したいドームがもうある。これが沼
- カスタムしなかったら、自分のものと言えなかった。それだけは確か
この記事は、カスタムの「やり方」を整然と並べるガイドではありません。
やり方はもちろん書きます。でも本当に伝えたいのは、試して、開けて、しっくりこなくて、また開けて、打ち続けて馴染む
——あの行ったり来たりの実感です。
HHKBのカスタムを考えている人に、先に言っておきたいことがあります。
カスタムするとメーカー保証は受けられなくなります。
分解した時点で保証対象外です。
参考にした注意書きは個人でカスタムをしている方の個人ブログにあったもので、公式のアナウンスではありませんが、この点は覚悟してから始めてください。
それでもやる価値はあったか。
ありました。ここから先は、その全記録です。
カスタムの全体像——4つの階層
HHKBのカスタムは、大きく4段階に分かれます。
| レベル | カスタム | 主な効果 | 難易度 | 分解 |
|---|---|---|---|---|
| 初級 | 吸振マット | 静音+安定感(滑り止め) | ★(貼るだけ) | 不要 |
| 中級 | Oリング(静音リング) | 底打ち音と衝撃をやわらげる | ★★ | キーキャップのみ |
| 上級 | ラバードーム交換 | 押下圧・打鍵感を根本から変える | ★★★ | 本体分解 |
| 仕上げ | 潤滑(ルブ) | 擦れ感・残った異音の微調整 | ★★ | 分解時に併用 |
上から順に手軽です。分解が怖ければ、吸振マットとOリングだけでもかなり変わります。
ただ、私のように「深さ」や「重さ」が気になる人は、結局ラバードーム交換まで行くことになります。
ちなみに、打鍵感ではなくキーの「位置」の方を変えたい人もいると思います。私はWinとMacで指が混乱するのを、キーマップ変更で解消しました。その実録は別記事にまとめています。
まず貼るだけ——吸振マットの正直な感想
一番手軽なカスタムが、純正の吸振マットです。本体の裏に貼るだけ。工具もいらない。私は2枚買って、Type-SとStudioの両方につけています(1枚はAmazon、もう1枚はHHKB公式サイトで購入)。
世間では「静音性が上がる」「打鍵感が締まる」と言われていて、それも分かるんですが——私の正直な感想は、「一番の利点は滑りにくくなったこと」。
本体がデスクにピタッと吸い付いて動かない。地味ですが、毎日使うと一番ありがたい変化でした。
分解リスクなしでこの安心感が手に入るので、最初の一手としては断然おすすめです。

※私が使っているのは本体付属の純正の吸振マットです。今はAmazonで純正が手に入りにくいので、Amazonで買える同等品(社外の吸振マット)を挙げています。
Oリングの迷走——厚さ・枚数で打鍵感が全然違う
Oリングは、キーの軸にゴムの小さなリングをはめて底打ちの衝撃を吸収するカスタムです。
ここで一つ、身をもって学んだことがあります。
リングの厚みと枚数で、打鍵感が全然違う。
「全然違います」——これは誇張ではなく私の実感です。1枚と2枚でここまで変わるのかと驚きました。
私のリング遍歴(3種類試した記録)
1. 遊舎工房で買った白い透明系の厚手リング
最初に手を出したのがこれです。秋葉原の遊舎工房(最寄りは銀座線・末広町駅)で買いました。
結果は——浅くなりすぎました。不採用。
2. Amazonで買った黒い薄手の丸いリング
次に試したのがこれ。厚手で失敗した反省から、薄手を選びました。
手応えはあったものの、「まだ何か違う」という感覚が残りました。
3. DESKEYSのサイレンシングリング(#3 Thin)
ラバードームを個人輸入するときに一緒に購入した薄手のリングです。
そして現在は、2のAmazonの黒い薄手リングと、3のサイレンシングリングの二段重ねに落ち着いています。
いくつか重ね方のパターンを試行錯誤しました。1枚だと深くて、厚いのを2枚だと浅すぎる、透明な太いリング1つだと浅すぎる。自分なりのセッティングを考えてやってみた結果、ここにたどり着きました。
ただし——ここでも「たどり着いた瞬間にしっくり来た」わけではないんです。
打ち続けているうちに、「これいいじゃん」という感じ。
カスタムのたびに同じ波が来ます。この話は、後でまた出てきます。

ラバードーム交換——ここが本命、ここが沼
HHKBの打鍵感の正体は、内部のラバードーム(ゴムのシート)です。これを交換すると、キーの重さ(押下圧)が根本から変わります。
純正は約45g。私が現在使っているのはDESKEYSのDES-Domes V3です。
押下圧の選び方
ラバードームの肝は「何グラムにするか」。定番のDESKEYS「DES-Domes」はカラーで押下圧が分かれています。
| 押下圧 | カラー目安 | 打鍵感の傾向 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 35g | ティファニー(薄緑) | とても軽い | 長文・軽さ最優先 |
| 42g | ピンク | やや軽い。純正に近いが楽 | 軽くしたいが誤爆は避けたい |
| 45g(純正) | — | 標準 | そのままで満足な人 |
※DESKEYSのドームは色名=押下圧で、上の3つ以外にも28g(チーズ)〜70g(グリーン)まで幅広く揃っています。色と押下圧の対応は製品・ロットで変わることがあるので、購入時に必ず確認してください。
DESKEYSへの個人輸入を2回やった話
パーツはDESKEYS(deskeys.io)という海外サイトから個人輸入しました。
正直に言うと、私は個人輸入に身構えはしませんでした。過去にも他に何回も同じようなことはしていますから…
英語のサイトは最近、Safariのページ自動翻訳が使えます。スマホでもSafariの自動翻訳があるので、これは非常に便利でした。英語が不安で躊躇している人がいたら、まずSafariで開いてみてください。
届くまでの日数は——体感で1週間ほどでしょうか。「まあ、こんなもんかな」という感じでした。
そして正直に言うと、待っている間が一番楽しかった。届くまでのあの時間が、なんだかんだ一番いいんですよね。
1回目:V2ピンク+サイレンシングリング
- DES-Dome V2(Pink / 68個入り)$58.00
- DES Topre Silencing Rings(#3 Thin)$12.00
- 送料 $12.00
- 合計 $82.00
最初に選んだのはV2のピンク(42g)。純正の45gから少し軽くしたかった。
交換してみて、軽くはなったんですが——「ちょっと違うな」と思いました。
2回目:V3ティファニー
- DES-Domes V3(Tiffany / 68個入り)$58.00
- 送料 $12.00
- 合計 $70.00
「ちょっと違う」が消えなくて、今度はV3のティファニーを個人輸入しました。
ここで大事な教訓です。2回に分けると送料も2回かかります。 送料は毎回$12。本体価格の約2割です。「送料が結構痛かった」——これは私の切実な実感です。迷っているなら、最初から複数の押下圧をまとめ買いすることを強く勧めます。
| 1回目 | 2回目 | |
|---|---|---|
| 品目 | V2 Pink+Silencing Rings #3 | V3 Tiffany |
| 小計 | $70.00 | $58.00 |
| 送料 | $12.00 | $12.00 |
| 合計 | $82.00 | $70.00 |
2回の合計で$152。当時のレートで約2万円ほどです。
V3ティファニーをつけて——「これだ!」は、やっぱり来なかった
V3のティファニーに交換しました。
つけた直後の感想は——「まあまあいいか」。
なんとも頼りない感想ですが、これが正直なところです。劇的な開眼はありませんでした。
打ち続けていたら慣れてきた、という感じ。
しかし、使ううちに手が馴染んできます。
おもしろいものですが。
バネも、リングも、ドームも、毎回この同じ波が来ます。試行錯誤して、たどり着いて、最初はしっくりこない。でも打ち続けるうちに馴染む。
そして重要なことなんですが、「本当に今自分が満足しているかって言われたら、そうじゃないのかもしれない」ということです。
身も蓋もないですが。
皮肉というか、沼というか。もう一個、「DES-DOMES CARROTS(キャロット)」という別ラインのドームがあるんですが、同じくらいの重さでも打鍵感(力のかかり方)が違うらしくて——それを試したいなという気持ちになってしまっている自分がいます。
カスタムに完成はない。でも、やり始めるとすごく楽しいですし、自分が納得するものになる。
むしろこれがなければ、カスタムしなければ、自分のものと言えないんじゃないか
——そう思えるレベルかもしれません。
混在セッティング——全部軽くしなくていい
ドームを交換するとき、全キーを同じ押下圧にする必要はありません。
私は確か——また開けて確認するのが面倒で、”確か”という温度なんですが——よく使うキー(Enterキー、Backspaceキー、アルファベットのキー)は軽い方に交換して、修飾キー(ShiftやControlなど)や打ち心地が欲しいキーは純正のまま残しています。
よく使うキーは軽くして、あまり使わないキーや打ち心地が必要なキーは少し硬いままにする。そういう工夫です。
「面倒で開けて確認してない」というのも正直なところです。でも使っていて違和感はないので、たぶん合ってるんだと思います。
ネット上では、全部を軽いドームにすると誤入力が増えるという声もあります。指を置いただけで沈んでしまうからです。混在セッティングは、軽さと誤爆防止を両立する上級テクとして覚えておくといいかもしれません。
バネ事故2件——「やっちまったな」からの復旧
ラバードーム交換やリングの試行錯誤で何度も開けていると、トラブルも起きます。
キーが効かなくなる問題は、少なくとも2回ありました。
事件1:バネが1個ない——と思ったら、重なっていた
押したときの感じがおかしなキーが1個ありました。
裏を開けてみたら、バネが1個ない。
「やっちまったな」
落としたか、なくしたか。部屋の中を探しましたが見つからない。これは参ったな、またどこかで買おうかなと思いました。
ところが——参考にしていた個人ブログに、「バネが重なっている場合があります」と書いてあったのを思い出して、よく見てみたら本当に重なっていました。
「こんなテンプレみたいな展開があるのか」と少し笑いましたが、本当に胸を撫で下ろして、なんとか直しました。
事件2:基板の上でバネがずれていた
リングを入れたり外したりの試行錯誤で、何回も開け閉めしていたときのこと。ちゃんと組んだはずなのにキーが効かない。
原因を特定するのに少し時間がかかりました。よく見たら、基板にバネがちゃんとくっついていなかった。あるべきところからずれていたんです。
発見してからは丁寧に丁寧にやりました。ひっくり返しながらくっつけたり、結構骨がいるんですよね。自分で試行錯誤しながら直しました。
やっちまったと思いましたが、「どうにかなる」のスタンスで根気強く進めると、いつかはどうにかなる。
そういうものです。
何度も開ける人へ
その頃にはキーボードを開けて、キーキャップを全部外してという作業、すごく面倒なんですけど、慣れてしまいました。
慣れるのはいいことかどうか分からないんですけど、一発で決まればいいんですけどね。
ルブ(潤滑)——面倒だが、やる価値はある
残った擦れ感や異音を詰めるのがルブ(潤滑)です。
私はいくつか試しました。
まず、Amazonで買った液体タイプ——マニキュアみたいな刷毛がついているやつ。これは良くなかった。
次に、遊舎工房で買ったグリスです。小さい蓋付きの瓶みたいなやつに入っていて、自分で百均で買ってきたネイル用の細い筆につけて塗る。
これは効果がありました。ただ、非常に面倒くさくて骨が折れました。キー1つ1つに筆で塗っていく作業は、正直に言ってかなり骨が折れます。
ルブの正確な製品名までは覚えていませんが、経験から言えることは——百均の細筆と遊舎工房のグリスの組み合わせが、私には合っていたということ。刷毛つきの液体タイプは楽そうに見えて、結局うまくいきませんでした。
費用の全記録
さあ、今回の散財記録。
| 品目 | 費用 |
|---|---|
| DESKEYS 1回目(V2 Pink+Silencing Rings #3+送料) | $82.00 |
| DESKEYS 2回目(V3 Tiffany+送料) | $70.00 |
| 遊舎工房(Oリング+グリス) | 数千円 |
| Amazon(Oリング+液体ルブ+その他) | 数千円 |
| 合計 | DESKEYSだけで約2万円($152) これに遊舎工房・Amazon分が乗って、ざっと2万円台 |
送料だけで$24(約3,500円前後)。本体の約2割が送料です。
一発で決まれば半分以下で済んだはずですが、私はトライ&エラーの回り道込みでこの額になりました。
最大の教訓は——ドームは最初からまとめ買い。迷っているなら2種類のドームを1回の注文でまとめて、送料を1回に抑える。これだけで数千円浮きます。
カスタムの手順(概要)
ラバードーム交換の手順を簡潔にまとめます。
- キーキャップを全部外す(列ごとに並べて保管——混ぜると組み戻しが地獄です)
- 裏面のネジを外して本体を分解する
- スライダー(軸)を外す
- 純正ラバードームを外し、交換用ドームをはめる
- 円錐スプリングを正しい位置に配置する(ここが事故の元——ずれるとキーが反応しなくなります)
- 逆順で組み立て、全キーの動作を確認する
作業自体は、「ドライバーで裏を開けて、ゴムを交換するだけ」。簡単っちゃ簡単です。
ただし、何度も開けることになる前提で心の準備をしておくことをお勧めします。一発で完璧に決まることは、たぶん稀です。
失敗しないためのコツ
- キーは列ごとに高さ・傾きが違う。外したら位置順に並べる(混ざると泣きます)
- Ctrl・Shiftはドームの向きが90度違う。向きを間違えると反応しない
- スプリングの扱いに注意。私の場合は飛散ではなく、バネが二段に重なっていたり(事件1)、基板上でずれて接触不良になったり(事件2)した。組むときは1個ずつ正しい位置にあるか確認する
- 基板の両面テープをゆっくり剥がす。力を入れると基板を傷める
- ピンセットは必須。指だけでやろうとすると、リングもスプリングも言うことを聞いてくれません
どんな人に向いているか
「とにかく手軽に変化を体感したい」人
- 吸振マットから始めてください。貼るだけで滑り止め+静音。戻すのも簡単です
「もっと静かに打ちたい」人
- Oリングを足す。底打ちの高い音がかなり抑えられます
「キーの重さ・深さを根本から変えたい」人
- ラバードーム交換へ。ここからが沼です。保証がなくなる覚悟は必要
「道具を自分の手に合わせて”育てる”過程を楽しめる」人
- 全部やってください。HHKBはそういうキーボードです
HHKBは特にこだわりの強い人が多いので、カスタムするのが前提になっているところもあるかもしれません。でも意外と、ノーマルのまま使っている人も多いかもしれないですね。保証も受けられなくなるので。
よくある質問
Q. Type-Sでもカスタムする意味はある?
Type-Sは元々静音なので、Oリングよりも「ラバードームで押下圧を変える」方向が有効です。私もType-Sのドームを交換しました。深さや重さが気になるなら、やる意味は大きいです。
Q. 元に戻せる?
戻せます。だから純正パーツは必ず保管してください。吸振マットは剥がせば戻る(粘着が強いので跡は少し残ります)。Oリングは外すだけ。ラバードームは保管した純正に付け替えれば戻せます。手間はかかりますが、「合わなければ戻せる」と知っていると気持ちが楽です。
Q. 一番効果が大きいカスタムは?
手軽さなら吸振マット、静かさならOリング、打鍵感(重さ)を根本から変えるならラバードーム交換。組み合わせると満足度が上がります。ただ、正解は自分の指でしか分からない——これが正直なところです。
Q. DESKEYSの個人輸入は難しい?
私は身構えませんでした。慣れているほうなので。Safariのページ自動翻訳があれば英語サイトもそこまで困りません。届くまでは体感で1週間ほど。不安な人もいると思いますが、注文自体は普通のネットショッピングと変わりません。

おわりに
バネも、リングも、ドームも、ルブも——振り返ると、毎回同じ波が流れていました。
試行錯誤して何度も開ける。たどり着いても、最初はしっくりこない。打ち続けるうちに馴染む。でも「満足したか」と聞かれると、そうじゃないかもしれない。
カスタムに完成はないんだと思います。
でも、カスタムしなかったら自分のものと言えなかった。HHKBはそういうキーボードです。
まだ試していないドームがある。次はどうなるか分からない。
でもこの「次は何を試そう」という時間がたぶん一番楽しいですよね。
みなさんも、よいカスタムライフを。
それでは。








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